「フル代表として勝てるチームだ」——“最高の購買体験”で勝負するギフトEC界の新星・TANP

かつて“起業後進国”と呼ばれた日本だが、今日は、スタートアップ・エコシステムの成熟を肌で感じられるようになった。メルカリが未上場のうちに100億円を調達し、7,000億円を超える時価総額でIPOを果たしたことが、その最たる例だろう。

 

そのメルカリに投資したグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)の高宮慎一が、「フル代表として勝てるチーム」と絶賛するスタートアップがある——ギフトに特化したECプラットフォーム『TANP』を運営するGraciaだ。

 

2019年8月、GCPなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで総額5億円の資金調達を実施。2017年の創業以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている。

 

代表の斎藤拓泰氏は、今回の調達を「M&Aを遠去け、本気でIPOを目指す決意表明」だと語る。起業に至るエピソードから、資金調達を決めた背景、「ギフトを通じて日本社会にインパクトを与える」今後の展望まで、話を伺った。

(構成:オバラ ミツフミ 編集:小池 真幸

“最高の購買体験”が競争優位性の源泉。業界が舌を巻く、ギフトEC界の新星

ーーまずは、Graciaが展開する事業についてお伺いさせてください。

斎藤拓泰
1996年生まれ。福井出身。幼少期をアメリカで過ごす。東京大学経済学部経営学科2019年卒。在学中からビジネスに興味を持ち友人と家庭教師の斡旋事業を立ち上げる。その後ITスタートアップに興味を持ち2016年から株式会社Candleで一年間フルタイムで働く。Candleでは月間4000万PVを超えるメディアでSEOなどマーケティングを担当。2017年6月にGraciaを創業。

斎藤拓泰(以下、斎藤):ギフトに特化したECプラットフォーム・TANPを運営しています。ギフト市場にもさまざまな領域がありますが、TANPがよく利用されるシーンは、セミフォーマルギフトとカジュアルギフトです。誕生日祝いや結婚祝いなど、親しい人に贈るプレゼントを購入する場として、認知していただいています。

ーーギフト特化ECは、これまでもいくつかサービスが存在しています。TANPは「後発」にも思えますが、今回大型の資金調達を実施するなど、サービスが成長している背景にはどのような要因があると思いますか?

斎藤:僕自身が考えるサービスの強みは、オプションのバラエティと、それを支える独自のロジスティクスです。ギフトシーンにおける購買活動は、通常のお買い物とは異なります。ギフトならではの幅広いオプション指定がありますし、指定日に確実に届ける正確性が求められる。

それに対して、僕たちは、在庫管理や発送管理、CS管理といったシステムを自社開発し、社内のオペレーションを最適化しています。ユーザーだけでなく、メーカー側のニーズにも応える体制を構築できている点が、サービスが成長している大きな理由だと思っています。

ーーロジスティクス強化への取り組みは、サービスローンチ時から徹底されていたのでしょうか。

斎藤:いえ、もちろん最初は手探りでした。サービスを運営する過程で徐々にニーズを汲み取ることができ、現在の体制に至っています。

たとえば商品を購入する際に、メッセージカードの添付や名入れなど、何らかのオプションを選択するユーザーは8割を超えています。もうニーズが顕在化しているわけです。しかしリリース間もない頃のシステムでは、それらを満たすことは困難でした。

そこで、僕らが追い求める購買体験——オプションを組み合わせることで、手軽に凝ったギフトを購入できること——を実現するためには、自社開発に踏み切るしかないと結論づけました。ユーザーとメーカーの希望を汲み取りながら開発を進めていったところ、結果的にそれが強みになっていた形です。

“フル代表”として、世界へ挑む——M&Aを遠去け、IPOへ

ーー高宮さんはこれまで、メルカリやミラティブなど、日本を代表するスタートアップへと投資をされてきました。Graciaは“史上最年少”ということですが、投資を決めた理由についてお伺いさせてください。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一

高宮:まず前提として、チームが非常にハイレベルです。僕は、経営における優秀さの定義の一つに、「経験 × ゼロベースで考える力」があると考えています。斎藤さんをはじめGraciaの経営陣は、特に後者の「ゼロベースで考える力」に圧倒的に長けている。

フルスクラッチでロジスティクスを構築したエピソードが端的に示すように、ゼロベースで考え、PDCAを回し、高速で改善を重ねる力がものすごく強い。この能力は、グローバルな視点で捉えても、日本が強みを持っています。その最たる例が、100万の桁のユーザを抱えながら数時間単位で改善を繰り返していた、ガラケーのソーシャルゲームでした。

Graciaのチームには、そのノウハウが脈々と受け継がれ、彼らと比較しても劣らないどころか、むしろ秀でている。23歳という若さに注目が集まりますが、Graciaは”年齢別日本代表”ではなく、“フル代表”として勝てるチームです。

経験値の不足、特に「これはやってはいけない」という”べからず”については、僕らが過去の事例を紹介することで、埋められる部分もあります。VCとして20年以上に渡り積み重ねてきたケーススタディを還元することで、”べからず”やセオリーが存在する困難はショートカットすることができる。それを踏まえ、確信犯的な「経営判断」に時間と労力を割いてもらうことができるので、“競争優位性の源泉そのもの”を磨き込み、世界で戦えるサービスになるはずです。僕らが掲げる「日本発ユニコーン創出」の有力候補として、投資を決めました。

ーー斎藤さんはなぜ、GCPから出資を受けることを決められたのでしょうか。

斎藤:まず、投資そのものを受けることを決めたのは、「本気でIPOを目指す覚悟ができたから」です。スタートアップを経営をする上で、主な選択肢は2つあります。M&Aでのエグジットを目指すか、IPOを目指すかです。

僕を含む経営陣はまだ若いので、一度エグジットをした上で、再び大きな挑戦をする選択もあります。一方で、ここでシリーズBで資金調達を行うと、M&Aでのエグジットが難しくなる。企業評価額が高くついてしまうからです。

斎藤:ではなぜ、このタイミングで投資を受け、IPOを目指すことを決めたのか。結論から言えば、TANPを通じて社会に大きなインパクトを与えることができると、本気で信じられたからです。

ブログに詳しい経緯を書いていますが、僕は日本を変えたくて起業しています。誰かを幸せにするサービスをつくり、文化や行動を変えるほどのインパクトを残したくて、起業家になる選択をしました。

TANPを通じてユーザーにギフトを届けていくなかで、意義のある価値提供ができていると感じていますが、まだまだ改善できる。これまでギフトを贈る習慣のなかった人が興味を持ったり、定番のシチュエーション以外でも気軽にギフトを贈りあう社会の実現も可能だと思ったんです。つまり、TANPを通じて日本のギフト文化を変えることは、起業した目的を達成する手段になる。そう腹落ちしたことで、IPOを目指す覚悟が決まりました。

GCPをパートナーに選んだのは、6号ファンドのリリースに記載されていた「連続起業家の再現性」という言葉に感銘を受けたからです。チームを組むことで、経験のない“1周目の起業家”にも、信用を築くサポートをしてくれる。経験不足は課題に感じていましたが、GCPとチームを組めば、TANPは天下を獲れると確信しました。

ギフト市場を席捲し、世界を目指す。日本発ユニコーンへの挑戦

ーーGCPとしては今後、具体的にどのようなサポートをしていくのでしょうか。

高宮:事業の戦略設計や組織づくり、採用から法務の支援まで、サポートできることは何でもしていきます。現在も、日々ツイッターのダイレクトメッセージで相談事をシェアしてもらえるくらい、フランクな関係性でやり取りをしています。

これまでに培ってきた知見を惜しみなく提供することで、重要な意思決定の際に「こういう考え方もある」という複眼的な視点を提供し、打ち手のオプション出しをすることが、僕たちの役割だと思っています。ただ資金の面で支援をするだけなら、僕らである必要性はないはず。何か困ったときに、一番最初に連絡をもらえる存在でありたいと思っています。

斎藤:分からないことが多過ぎて、「会社のパソコンは購入すべきなのか、リースすべきなのか」といったことまで相談しています。そうした「相談していいのか分からない」程度の質問ですら、フランクに聞くことができる。もちろん高度な経営における意思決定のサポートもしてくださるので、僕たちとしてはこれ以上ないパートナーだと思っています。

高宮:若い起業家と投資家の間には、知識・情報格差があります。でもそれらは、「知ってさえいればいいもの」であり、情報を取得すること自体に時間をかけているのは、あまりにもったいないです。「先輩起業家に相談する」「一度会社に入って経験を積む」といったことも可能ですが、それでは時間がかかり過ぎます。株主然として構えるのではなく、フラットなパートナーとして、一緒にIPOを目指していきます。

斎藤:直近では、採用のサポートを重点的に行っていただいています。採用したい人物像の解像度を高めるところから、上流の戦略設計まで、ハンズオンで支援していただいていますね。

ーー現在は、どのような人材を採用したいと考えているのでしょうか。

斎藤:一言で表現するなら、「本気で日本一を目指せる人」ですね。今回の資金調達の背景には、サービスをより強化していきたいという想いがあります。ロジスティクスの強化はもちろん、ユーザーとのコミュニケーションをよりよくしたり、取扱商品を充実させたり、全方位的に人材は募集しているので、職種は問いません。

現在は事業戦略がある程度見えていて、何をすべきかが明確になりつつあるフェーズです。戦略に沿ってサービスを磨き込むことが直近の課題なので、そこに対してコミットできる人材が望ましいです。年齢や経験を問わず、実力を評価する組織なので、そうした社風にも理解があるとなお嬉しいです。

ーー最後に、今後の展望について、お伺いさせてください。

斎藤:まずは、現在展開しているToC向けギフトサービスとしての第一想起を獲得することにコミットします。その上で、ToB向けにも展開していく予定です。

高宮:既にニーズが顕在化しているイベントドリブンなギフト需要は、彼らであれば間違いなく取り切ることができると思います。それだけでも時価総額百億円前後まで成長できるので、その先を見据え、数百億、数千億規模の世界観にどうやってたどり着くかを考えていきたいですね。

斎藤:愚直に取り組んでいけば、ギフト特化ECとして、第一想起を獲得できると思っています。市場のナンバーワンは、視界に捉えている。日本のギフト文化をアップデートし、たくさんの人がギフトを通じて感謝を伝えられる社会を創ります。


関連記事
ブラックボックス化する“値付け”を科学。“PriceTech”ベンチャー・空に秘められた「途方も無い可能性」
なぜGCPは「既存産業の変革」に注目するのか? ラクスル、オクト、キャディが語る、デジタルトランスフォーメーション時代の勝ち筋