サーキュラー・エコノミーの先にある、ものを捨てない社会─CLASが目指す、新しい文化創造

人々の暮らしをめぐる環境は大きく変化している。パンデミックを契機とするテレワークの普及では、多くの人々が生活の急速な変化を経験した。ワーキングデスクを急いで調達した人も少なくないだろう。

多様化する暮らしに、物ものを所有しない生活への支持の広がり。それにともない、家具などの耐久財への意識も変化し多様化している。いまや「サステナビリティ」は単なるバズワードを越えて、人々の生活に浸透。ものを捨てない社会への要求は、急速に高まっている。

こうしたなか、必要なときに必要なものをレンタルし、不要になったら返却する、循環型の「所有しない利用」を促進する、家具・家電のサブスクリプションサービスを展開するのが「CLAS」だ。

2021年9月、CLASを運営する株式会社クラスは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)、株式会社モノフルのグループ会社(以下、モノフル)などを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約21億円の資金調達を発表した。

CLASは、いかにサーキュラー・エコノミーを実現していくのか。また、サブスクリプションビジネスの先に目指す、新しい文化創造とはどのようなものなのか。株式会社クラス代表取締役社長の久保裕丈氏と、GCPの野本遼平氏に訊いた。

(取材・構成:福田滉平、写真:山下直輝)

コロナが早めた社会の変化

──CLASは2018年の創業ですが、この2年間はパンデミックという大きな変化がありました。このコロナ禍はCLASにどのような変化をもたらしたのでしょうか?

久保:CLASは、ライフスタイルやライフステージの変化に際して、大きくて、重くて、値段も高い、「耐久財」と呼ばれる物を保有するのではなく、サブスクリプションでレンタルすることで、最適な行動を後押しするためにスタートした事業です。

株式会社クラス 代表取締役社長 久保裕丈
東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年にA.T.Kearneyに入社。2012年、女性向け通販サイトMUSE&Co.を設立し、2015年に売却。2017年、Amazonプライム・ビデオの恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン シーズン1』に初代バチェラーとして出演。2018年より、株式会社クラス 代表取締役社長。

コロナ禍で一番感じたのは、こうしたCLASが目指す価値観や文化創造に向けての、変化のスピードが速くなっているということです。

コロナによって、会社に行かず在宅で仕事をすることも多くなったことで、家庭用家具でもオフィス家具でも、「保有していることがリスクである」という価値観が多くの人に広がったのではないかと思います。

野本:CLASは、それこそ30年後の世界を見据えた、時間をかけた長期での取り組みを当初は想定していました。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル 野本 遼平
弁護士としてスタートアップ支援に携わった後、2015年にKDDIグループのSupershipホールディングスに入社。経営戦略室長・子会社役員として、全社戦略策定、事業開発、M&A、投資、政策企画を統括。2019年よりグロービス・キャピタル・パートナーズ。著書に「成功するアライアンス 戦略と実務」(日本実業出版社)など。

例えば、事実婚など、法律上の結婚をしない人も増えてきていますが、こうした新しい家族形態も30年後には、当たり前になってくるかもしれません。

そうすると、人の生活の変化、ひいては引っ越しの頻度も増えていく可能性があるなかで、同じ耐久材を使い続けたり、その都度買い換えたりするのは、「資源の無駄でありナンセンスである」という価値観が広がった未来がきっと来るのだろうと考えています。

この変化を実現するには、しっかりとしたインフラが必要ですが、そのインフラを整備するのは、非常に時間を要するのではないかと考えていたからです。

しかし、この変化が前倒しで到来しつつあることを足元で感じています。例えば、「SDGs」という言葉が最近広がってきていますが、CLASに初回投資したタイミングで実はあまり言われていませんでした。

久保:私も長期の経営を念頭にしていましたし、SDGsという言葉についても、思いのほか、早く注目されるようになりました。

この言葉を「ブーム」と言うこともできるかもしれませんが、概念は不可逆だと思います。

このコロナ禍によって、個人に限らず法人も、取り巻く社会情勢や先行きが不安定であるということが、人々の自覚として顕在化しました。

こうした、追い風となる出来事が複数起こり、時間が短縮されている感覚です。完全な2次関数的とまでは言わないまでも、加速度がついてきていることを感じています。その潮目が変わったのは、去年の4月からですね。 

──CLASのユーザーを対象にしたアンケート調査では、「ものを捨てない社会づくり」に期待する声が1番多いという結果がありました。

久保:サステナビリティやSDGsといった言葉は、ずっと社内でしか言ってこなかった言葉で、対外的にはあまり伝えていませんでした。

それにも関わらず、お客様が自然と感じてくださっていた。これは大きなサプライズでしたし、すごく嬉しい結果でした。この結果を受けて、より対外的にも声をあげながら、この動きを加速化していく必要性を感じています。

野本:ビジネスの観点で見ると、30年スパンで考えた際のトレンドを、向こう5年の期間においてどう評価するかという論点は存在します。

CLASはレンタル家具を通じて、「サーキュラー・エコノミー」を事業として行っているので、企業体としての利益という形、そして社会の変化という形、その両輪で、見ていく必要があります。

長期的な目線で考えると、ちょっとSF的な話にはなりますが、木材が希少資源になるという未来も想定できるのではないでしょうか。そして、木材が枯渇する前に、木材の利用に対して税制面での対応が取られることも、あり得ない話ではありません。

大量に廃棄されることを前提として、大量生産を行って、大量に捌くというモデルが成り立たなくなったときに、家具を循環させるオペレーションが求められるようになります。

しかし、このオペレーションは、一朝一夕でできるものではありません。現実問題として、中長期マクロの視点から逆算して、今の立ち位置で何をすべきか、というのは重要なポイントのように思います。

久保:実際、新型コロナの影響によって木材の需要が急速に高まったことで、調達が困難になり、「ウッドショック」と呼ばれる、木材価格が高騰する現象が発生しました。2024年度からは「森林環境税」という、日本の木材環境を守るための新税が課せられるようになります。

アンケート結果から見えたような、人びとの社会への気づき、そして、社会の変化が、想定よりも早く起こっているように思います。 

CLASは「家具屋」ではない

──事業の中身についてお伺いさせてください。家具のサブスクリプション事業を行うには、配送、在庫管理、リペア、そして、それを束ねるシステムと、あらゆる領域を手がける必要があります。そうしたなか、CLASでは、多くを自前で開発、整備しています。

久保:CLASを始める際に、自分たちを4つの職業で定義しました。

1つは「物流屋さん」。それも、今まで存在しなかった、大型商品でサーキュラー・エコノミーを実現するという、難易度の高い循環型の仕組みを作らなければならない。

2つ目が、リペアやロジスティクスの効率化を図るために、家具や家電の構造に関して精通した「物づくり屋さん」でなくてはいけない。

3つ目が、そうした仕組みを最大限効率よく支えるシステムを構築する「IT屋さん」。

そして最後に、投資回収や法人とのビジネスを考えると「金融屋さん」である必要もあります。

おそらく、一般的なベンチャーの常識や、セオリーで考えると、2つ以上超える壁がある場合、やらない方が良いとされると思います。そうしたなか、CLASには、創業時から超えなければいけない壁が4つ存在ました。

すごく難易度が高いというのは承知の上で、だからこそ参入する企業も少ない。そして、事業計画を作成してみると、この壁を超えた先には、すごく明るい未来が見えていました。

何よりも解決したい社会課題があって、その解決の方法が明確であるのに躊躇したくなかった。

野本:投資の検討プロセスで、家具メーカーさんや小売りの方にインタビューを行いました。その時に伺ったのは「家具のレンタルは、絶対成り立つわけがない」という声でした。「利用者から返ってきた家具の在庫管理が難しい」や「配送コストが見合うわけがない」、「リペアは別の業者に発注するので時間がかかる」。

しかし、CLASは、こうした課題を認識したうえで、オペレーションを構築しています。

家具業界の既存プレイヤーが「無理」と断言する要素や課題を踏まえて、ビジネスモデルを分解し、デジタルの力も使いながら組み立て直して展開をすれば、ビジネスとして成り立つのではないか。

ふわっとしているのであまり使いたくない言葉ですが、最初から「DX」されている事業をつくりあげるイメージです。ビジネスの難易度が高くても、成功した場合にはフロンティアが開けているので、チャレンジする価値があるのではないかと考えました。

家具・什器のマーケットサイズは非常に大きく、いわずもがな、歴史も長い。

人口減少や、時短勤務など、さまざまな変化があるなかでも、人類が社会生活を続けて行く以上、間違いなく残るマーケットです。それこそ、仮に人間がメタヴァース空間で人生のほとんどを過ごすことになったとしても、生身の身体はどこかに腰かけている、あるいは寝ているわけです。

しかし、日本のこの市場では、ニトリさん以降、長らくディスラプティブなプレイヤーが現れていません。

次にこのマーケットをアップデートするようなプレイヤーが現れるとすれば、「サーキュラー・エコノミー」や「サブスクリプション」なのではないかという見立てはありました。

そうした中で、在庫トラッキングを含めたロジスティクスと、リペアを整備すれば、ビジネスが成り立つ、というCLASの見立ては正しいのではないかと思い、投資を行ったという背景があります。

売り切りモデルを採用しない理由

──CLASのような、家具のサブスクリプションでは、最後に買い取りのオプション前提に、実質的には家具の分割払いのようなビジネスモデルを採用しているサービスが多いですが、CLASでは行っていません。そこには理由があるのでしょうか? 

久保:当然、売り切りモデルを採用したほうが、キャッシュも安定するし、在庫リスクも軽減できる。ここについては、社内では何度も議論してきました。しかし、この選択肢を設けていない理由は2つあります。

1つは、目指す世界観があるからです。ものを捨てない社会を作ろうと、この商売を続けています。それなのに、物を売る、つまり所有をさせてしまうということは、それらの品はいつか捨てられる未来が来てしまう。

CLASの手でできる限りは物を循環させ捨てない社会づくりを突き詰めたいというのが1つ目の理由です。

もう1つは、CLASでは、返ってきた商品をきちんとリペア・クリーニングすることができているという点です。90数パーセントの商品は、正しくリペアを行い、当月内にまた次のお客さまの手に渡っています。

売り切りを行うモデルと違い、複数のお客様を通じて循環させ続けることで、最終的には売り切りよりも大きな利益を得ることができる。また、在庫にあるパーツは、6万点~7万点存在しますが、その9割近くが稼働しています。

システムとオペレーションによって、利益と在庫をコントロールできる状態にある、というのが2つ目の理由です。

──CLASでは、リペアの作業はどういった方が行っているのでしょうか。

久保:リペアを行う部隊には、椅子のデザイナーや家具職人などが、社員として在籍しています。リペアは、マニュアルでできる部分も存在しますが、それなりに専門的な知識も必要になる領域です。

CLASの特徴として、リペアをする部隊は、物流チームの傘下ではなく、「MD」という商品を比較したり、選んだりするチームの傘下に紐付いています。

これは、リペアする部隊から上がってくる意見を、製品選びや製品づくりに活かしていくためです。

CLASは、やっぱり「物づくり屋さん」でもあることが重要で、このビジネスに適した製品の要件についてのノウハウをひたすら蓄積していかなければなりません。

そのため、常にリペアチームとMDチームがやり取りをして、次の製品づくりに活かしていくというサイクルを回しています。 

また、CLASの事業の中でとても大事なのが、在庫管理です。

一般的なECや小売をするのであれば、商品単位での在庫管理でよいのですが、CLASでは、返ってきた家具をリペアしなければならないので、商品単位ではなく、パーツ単位で管理をしています。

それぞれのパーツについては、そのパーツが、お客様の元で利用中なのか、返送準備中なのか、リペア待ちなのかなど、細かなステータス管理を行います。その際には、需給バランスを見ながら、リペアの優先順位をつけることも必要です。

通常であれば、このようなステータス管理は行わないと思います。

加えて、パーツごとの、今、どのライフサイクルを送っているのか、どんなお客様の手元に行っていて、どのくらいの収益を生んでいるのか、という非常に細かなところまですべて管理しなければなりません。

野本:このシステムを自分たちでは作れない、というのが、既存のプレイヤーも及び腰になっている理由なのだと思います。

要するに、このオペレーションを、いままで使ってきたシステム、台帳やエクセルで処理するのは非常に難しい。

久保:CLASのCTOの山下がすごい、という話でもあるのですが、このデータベースの構築は大変だった部分です。

「何屋さん」であるかが競争優位に直結する

──スタートアップ的な思考法では、社内でリソースを持たずに、協業やパートナーシップという取り組み方もあると思います。一方で、CLASが、ロジスティクスからリペアまで、一連の業務を自前で整備しているのはどうしてなのでしょうか?

久保:自分たちを何屋さんだと定義するのかは、自分たちのコンピタンスを提示することに近い。大事な参入障壁であったり、差別化を図れたりする部分は、内製化しないと尖らせきることができないと思っています。

腹を決めて、自分たちでイチから作っていくしかないという感じです。

こうした理由から、ロジスティクスとリペアの環境作りについては、創業時から自社で整備しようと考えていました。

最初に採用に動いたのも、この2つの領域からです。僕の肌感覚では、ここさえなんとかなっていれば、時間がかかったとしてもグロースはするだろう、という仮説が創業時からありました。

例えば、すごく効率的で生産性の高いロジスティクスを実現するためには、商品設計が重要になります。家具には、組み立てる際にビスを使う物が多くありますが、ビスを使うとバラすことができません。

一方で、CLASでは、リペアができる、一度組み立てても再度バラせるなど、製品に求める要件が多く存在します。

──CLASは、D2Cとしてプライベートブランド家具を、サブスクリプションで提供するところから事業をスタートしています。

久保:多くのベンチャーは、「リボンモデル」といわれるような、ユーザーとサプライヤーの間に入って事業を展開する、という思考をすると思います。そのほうが圧倒的に参入障壁もリスクも低い。

しかしCLASの場合、レンタル家具のサブスクリプションという事業に見合う、正しい商品の見極めや、ノウハウの蓄積というのがすごく大事になってきます。

だったらまずは、自分たちで本当に必要な要件が満たされている家具を作って、D2Cとしてスタートした方が、ユーザーに価値を提供しやすいと考えて始めたのがプライベートブランド家具です。

D2Cを通じて、レンタル家具のサブスクリプションに求められる要件を解明した上で、要件に見合う家具を中心に、サプライヤーとともにマーケットプレイスを広げていこう、という順番で事業の拡大を考えていました。

野本:D2Cもよく耳にする言葉の一つですが、それこそ「SaaS」などと同じレイヤーの概念で、ビジネスモデルの名称でしかありません。

重要なのは、何のためにD2Cを展開するか、D2Cを採用する必然性はあるか、ということだと思っています。

CLASの場合、ここが明確です。

もちろん利益率を高めるのもビジネスとしては重要なのですが、理想とする物流や製品仕様を解明するために、まず自分たちのプライベートブランド家具を作り、D2Cを行う。そして、解明したモデルをプラットフォームに広げていっています。

このステップに納得感があったので、D2Cについて腹落ちすることができました。 

誤解を恐れずに言えば、CLASは家具屋さんになってはいけない。空間をつくるUXを提供する会社であるべきです。 

僕もCLASを利用していますが、注文した家具が届き、スムーズに搬入されて、自由に入れ替えることができる。このすべてが、CLASが提供しているひとつの体験です。

個々の製品は、この体験のごく一部でしかなく、ユーザーとの接点は、他にも多く存在します。そこをきちんと整えていくとういことが必須事項なのだと思います。

実現したい理想はまだ先

──久保さんは今、目指す世界のどのくらいまで、CLASで実現できているとお考えでしょうか。

久保:サービス提供者として、目指すその世界観をどのぐらい体現できているかと言うと、1割にも満たないというのが正直なところです。

サービスの提供価値を、機能的価値、情緒的価値、自己実現価値、と3階層に分けて考えると、創業からこれまでの3年間は、機能的価値を整えていくことに注力してきました。

機能的価値とは、インフラや、オペレーション、システムなどのことです。この最低限の機能を整えないまま、スケールさせようとしても、体験を損なってしまい、結果として文化創造に時間がかかってしまいます。

CLASは「”暮らす”を自由に、軽やかに」というビジョンを掲げていますが、例えば、利用期間がまだ全然自由じゃない、返却に際しても、まだ全然軽やかじゃないなど、課題がまだあります。

サービスの設計として、自由で軽やかにしていくためには、きちんとインフラを強化し、機能的な価値をちゃんと具備していく必要があります。ここは引き続き、強化していかなければいけません。

しかし、その上の段階。情緒的価値、そして自己実現価値を提供するところにも、これからは注力していきたい。

ここは、まだ業界全体として、できていない部分だと思っていますし、やる余地がまだまだ残されていると思います。

CLASは、究極的には家具屋ではないと考えています。

では、何をしたいのかというと、CLASを利用してくれることで、その人のQOLや生産性が上がり、人生が良くなるお手伝いをする仕事だと考えています。

こうした、自己実現価値を備えていくためには、お客様の情緒を反映したレコメンデーションを行う仕組みの部分と、お客様とのコミュニケーションなどCRM(Customer Relationship Management:カスタマーリレーションシップマネージメント)を高めていく、その両方を整えていく必要があります。

野本:実はこの前、知り合いから、CLASを利用しているという連絡を受けて、驚いたんです。

というのも、その人は、IT系と呼ばれるような、最新トレンドを常に追いかけている業界にいる人ではなかったからです。

イノベーター理論で呼ぶところの、キャズムの向こう側の「アーリーマジョリティ」に該当するような人にまでCLASの利用者が広がっていることを実感しました。

久保:野本さんが驚かれたように、今、CLASでは、IT企業を代表例とするような、転職や昇進などで、生活の変化が速い業界で働いている人たちが、主なターゲットになっています。

このユーザー層をこれからは、新社会人やファミリー層など、幅広い年齢層にまで広げていきたいと考えています。

加えて、ユースケースも広げていきたい。

これまでは、転職や同棲、結婚など、ライフステージの変化に応じて利用していただくのが主でしたが、これからは、服を着替えるように、インテリアを変化させるために利用してもらいたい。こうした文化創造を狙っていきたいと考えています。

──取り扱う商品についても広げる計画を掲げていますが、どのような商品がこれからCLASに増えていくのでしょうか。

久保:すでに家電は多数取り扱 っていますが、他には、インテリアの領域。ラグ、カーテンをはじめとした、インテリア商品の取り扱いを広げていきたいと考えています。また、OA機器やアウトドア用品、レジャー用品も対象です。

重点領域がここだ、というよりも、ユーザー層とユースケースのターゲットを広げていくにあたって、その方たちが「所有したくない」とおっしゃる物については、ワンストップで何でも扱っていこうと思っています。 

CLASの次の挑戦

──この度、総額約21億円の調達を公表しました。まず、野本さんに今回のラウンドでCALSに期待していることについてお伺いさせてください。

野本:CLASは、よくも悪くも堅実で緻密な積み上げが得意なチームですが、今回のラウンドは、大きいスケールで事業を展開していくにあたって、ギアチェンジをするタイミングだと思っています。

D2Cを出発点として、今では、マーケットプレイスの拡大を進め、商品数も増えています。こうした、5年後、10年後から逆算した取り組みをしっかりと組み上げていく、その出発点という感覚です。 

──プレスリリースでは、採用・組織体制の強化、サービス提供エリア/取り扱いジャンルと商品点数の拡大、そして、マーケットプレイスの拡大を挙げています。具体的にはどういった取り組みを行っていくのでしょうか。 

久保:投資する領域は、すべてをひっくるめると、人の採用だと思っています。

例えば、取り扱う商品数を増やし、商品をきちんとお客様ごとにレコメンデーションする、ということをやろうとした時に、結局必要になるのは、人になります。なので、システムエンジニアや、PdMと呼ばれるような複雑性の高い施策のマネジメントができる人材を増やしていきたい。 

もう1つは、コミュニケーションと整えていくために、PMMと呼ばれるような人たちの採用です。

CLASが注意深く見ている指標にNPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)があります。このNPSが上がった先には、お客様のなかで、自然とリファラルが生まれてくると考えています。

まずは、インターナルなコミュニケーションとして、CLASのサイトの中で十分に発揮していく。そして、お客様が利用してくださることで、その人の人生が良くなる。そして、そのお客様が発信していただけるようになると、マクロで見たときに、世界や社会にも、広がっていく、というのが目指す状態です。

こうした、CLASの世界観を体現するために必要な、PdMとPMM、そして、CLASのシステムを支える、エンジニアやオペレーション人材の採用を進めていきたいと考えています。

──D2Cとして始まったCLASですが、マーケットプレイスへの参入も進めています。

久保:自分たちの力だけで、「ものを持たない、捨てない社会」を作るのには、限界があるかなと思っています。今回、大きく調達させてはいただきましたが、それも限りある資源です。

冒頭の野本さんの話にあったように、メーカーの方にとっては、自社でリカーリングビジネスに参入するのは難しい。

であれば、リスク負担なく、CLASを通じてリカーリングビジネスに参入してもらい、従来よりも大きな利益をメーカーに得てもらおう、と始めたのがマーケットプレイスの事業です。

マーケットプレイスでは、商品のアセットはメーカーに持ってもらい、レベニューシェアを取り交わすことで、CLASがサブスクリプション事業のプラットフォームとして機能します。

野本:発想は、アマゾンが展開するマーケットプレイスやフルフィルメント機能にも近い形ですかね。納品すれば、後はアマゾンのプラットフォームでまわしてくれる。

久保:ものすごく近いと思います。すでに、イトーキさん、アイコさん、Ankerさんなど、名だたるメーカーさんがレベニューシェアの取り組みに参加して頂いています。

ものを捨てない社会を実現するためのインフラになる、ということが1つ目標だと思っています。

野本:スタートアップとして資本が限られるなか、メーカー側にアセットを持ってもらうことでビジネスをスケールさせやすくなるという点で、この取り組みは重要だなと思っています。

これも、前提となるロジスティクスとリペアのインフラをCLASが整えることができたという背景もあると思います。

チャレンジングな取り組みではありますが、このタイミングで、本格的に打ち出していってもらいたいです。

──全国展開という野心的な計画も掲げています。

久保:CLASは今、1都3県と大阪、京都、兵庫の一部の地域でしか展開できていません。

全国展開を実現するには、各地で配送オペレーションを協業してくださるパートナーが必要になります。

大型の家具や家電の配送と組立設置ができる運送業者は、複数人で配送と組立設置を行う「ツーマン配送」や「スリーマン配送」と呼ばれる、地場の小さな専門の業者さんでないと難しい部分も大きい。

主要宅配業者でもお送りいただける家具家電はありますが、一定サイズを超えると取り扱い不可となるケースもあり、地域展開も一筋縄では行かないのが現状です。

こうした地場の業者さんは、ホームページを持っていなかったりと情報取得が難しいケースが多いです。しかし、それらを丁寧にネットワークしてゆき、全国での循環型配送網を築いていきたいと考えております。

一方で、主要宅配業者にも対応いただけるような、配送効率の高い家具の開発も進めているところです。

これらの施策を合わせて、少なくとも1年以内のうちには全国展開できる状態を狙っています。

(了)